13人が本棚に入れています
本棚に追加
***
次の日、秋生は学校を休んだ。その次の日も。さらにその次の日も。
四日目にしてようやく登校してきた秋生は、顔面にひどい痣を作っていた。青っぽく腫れた目元。痛々しく盛り上がった頬の瘡蓋。切れた唇。それは明らかに、暴力の痕跡。
噂が流れ始めたのはその時からだ。秋生が廊下を歩くたび、その噂は絵の具に水を垂らすように広がっていく。じわじわ、じわじわ。
間もなく、茂樹の耳にも入ってきた。
あの日、被服室で。
川端秋生が澤村花純に手を出した。
花純は拒絶し、顛末を聞いた真部徹が秋生に制裁を下したというのだ。
「川端くんって可愛い感じの人だと思ってたのに。無理矢理迫るなんてサイテー」
誰かが言った。
「真部の女に手を出すとか勇気あるよな」
「ていうか、あいつってそっち系じゃなかったんだ。もしかして、澤村に近付くためにそっち系装ってたとか?」
「こわっ。つーか、きっしょ」
あとは、悪評が湧くばかり。
秋生は何も言わなかった。何ひとつ否定もしなかった。ただ、黙って自分の席に座り、虚ろな目で黒板を見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!