嘘と一輪挿し

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 今日も夕闇が店先を包みつつある。  いつの間にか、彼女は店に来なくなった。暫くは何事も無かったかのように店に来ていたが、気が付くと姿を消していた。  生首を見せられたあの日から、彼女が来なくなったと気付くまで、どのように接客していたかは記憶にない。  それから二人、いや、彼女と生首の少女がどうなったのかは知らない。この近辺の住人が死体遺棄で捕まったという話も聞かない。ただ、一度だけあの屋敷の前を通りかかった。あの二人の事を確認したかったわけではなく、ただ偶然通りかかった。  そこにあったのは、元の壁の色が分からないほど色褪せた、崩れかけの廃屋だった。
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