1.夜のサブスク契約

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 リビングに戻ると、コーヒーのいい香りがたちこめる。  彼に促されて、ソファにすとんと腰かけた。 「簡単ですけど」 「わー!!!」  おしゃれな木製のカッティングボードをお皿がわりに、きれいに盛り付けられたキウイとバナナとオレンジ。  焼きたてのトーストは厚切りで食べやすいように半分にしてくれてある。 「お店みたい」 「まあ、たまには」  いただきます、とパチンと手を合わせた彼と一緒に、自分もいただきますをして食べ始める。あれ、なんか。幸せ? 「藤原さん」  彼の低い声はとてもセクシーだ。会社でそう思ったことは一度もなかったのに。コーヒーカップを持ったまま動きを止めてすっと目を遣ると、パチンと視線が絡まった。 「……なに?」 「どうでしたか、セックスの相性」  ぶっ、と飲みかけたコーヒーを吹きそうになり、なんとか踏みとどまる。 「あ、あ、あぁ、せ、セックスね」 「まあ、聞かなくても分かりますけど、一応」 「な、なんでわかるの?」 「そりゃそうでしょ。あんなにイキまくって、よがってるの見たら……」 「ちょっと!! もう、何言ってんの!!」  顔から火がでそうになるくらいの、とんでもない言葉にうろたえる。  でも、それは嘘なんかじゃない。本当のことだ。 「で、どうしますか。サブスク契約」  私は食事の手を止めて、永井くんをすっと見た。 「復讐、ほんとに一緒にしてくれる?」 「いいですよ。できることであれば協力します」 「……じゃあ、よ、よろしくお願いします」 「サブスク契約付き?」 「付き……で」  計画話し合いましょうと、トーストを頬張る永井くん。  なんだか少しだけ嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。  
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