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リビングに戻ると、コーヒーのいい香りがたちこめる。
彼に促されて、ソファにすとんと腰かけた。
「簡単ですけど」
「わー!!!」
おしゃれな木製のカッティングボードをお皿がわりに、きれいに盛り付けられたキウイとバナナとオレンジ。
焼きたてのトーストは厚切りで食べやすいように半分にしてくれてある。
「お店みたい」
「まあ、たまには」
いただきます、とパチンと手を合わせた彼と一緒に、自分もいただきますをして食べ始める。あれ、なんか。幸せ?
「藤原さん」
彼の低い声はとてもセクシーだ。会社でそう思ったことは一度もなかったのに。コーヒーカップを持ったまま動きを止めてすっと目を遣ると、パチンと視線が絡まった。
「……なに?」
「どうでしたか、セックスの相性」
ぶっ、と飲みかけたコーヒーを吹きそうになり、なんとか踏みとどまる。
「あ、あ、あぁ、せ、セックスね」
「まあ、聞かなくても分かりますけど、一応」
「な、なんでわかるの?」
「そりゃそうでしょ。あんなにイキまくって、よがってるの見たら……」
「ちょっと!! もう、何言ってんの!!」
顔から火がでそうになるくらいの、とんでもない言葉にうろたえる。
でも、それは嘘なんかじゃない。本当のことだ。
「で、どうしますか。サブスク契約」
私は食事の手を止めて、永井くんをすっと見た。
「復讐、ほんとに一緒にしてくれる?」
「いいですよ。できることであれば協力します」
「……じゃあ、よ、よろしくお願いします」
「サブスク契約付き?」
「付き……で」
計画話し合いましょうと、トーストを頬張る永井くん。
なんだか少しだけ嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
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