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「ふぅ……」
大きく息を吐いて頭を振る。
朝とはまた違った雰囲気にみえる彼の部屋。スッキリと片付いていて温かみのあるファブリック。なんか、すごく心地よい。
──夕飯、作っておきますね。
私が今から行くと連絡をすると、永井くんからそうメッセージが返ってきた。
料理上手なのは意外だった。丁寧に作られたであろう肉じゃがに焼き魚、味噌汁に炊き立てのご飯と漬け物がダイニングテーブルに並ぶ。
「どうかしました?」
「いや、ものすごく美味しそうだなと思って」
「そう言われると嬉しいです、食べましょう」
彼に促されてイスに腰掛ける。
向かい側に彼が座り、いただきますと言って肉じゃがを口に運ぶ。優しい味が体の奥まで沁みてくる。
こんな美味しい食事をしながら、復讐計画の話なんてできない。そう思うくらい美味しい美味しいと言いながらたわいもない話を続けた。
本題に入ったのは、彼がシャワーを浴びるのを待って、ビールを開けて乾杯をしてからのこと。
ソファに私が座っていると、当たり前のようにその隣に彼が缶ビールを持ってきて座る。
妙なドキドキを抑えようと、ビールを喉の奥に流し込んで、ぽつぽつと話を始めた。
「永井くん、復讐計画も立ててくれるってほんと?」
「計画ってほどのものでもないですけど」
紺色のキャンバス地のソファはすごく座り心地がいい。木製のローテーブルはブラウンでベージュのラグが敷いてある。
「計画の前に、聞きたいことがいくつかあります」
「……なんでこうなったか。だよね?」
「はい、言いたくなければいいんですけど参考までに」
「うん……」
私はすっと座り直して、彼に向き合った。
「あのね、美濃さんに彼氏を取られたのは二度目なの」
「昨日、そう言ってましたね」
「一度目は高二のとき、あからさまに乗り換えられたって感じだった」
「へー」
「まさか二回目があるとは思わなかったよ。なんなんだろうね」
下唇を噛み締めて顔が歪む。私はビールをぐびぐび飲み干すと、ふーっと息を吐いた。
「藤原さんに恨みでもあるんでしょう」
「やっぱり、そう思う?」
「はい。風見さんのことが好きなんじゃなくて、藤原さんを傷つけることが目的だと思います」
二度も同じことなんか起きませんよ。そう言って永井くんは腕を組んだ。
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