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「私、何かしたかのかな。美濃さんに」
「まあ、気がつかないうちに何かした可能性もあるし、向こうが一方的に恨んでるかもしれないし」
「うーん……思い当たることがない」
美濃燎子は高校の同級生。私とは正反対のきれいでエキゾチックな魅力の持ち主で、黒髪のボブカット。個性的な印象があった。
私が当時付き合っていたのは一つ上の先輩。突然別れを告げられたと思った次の日、燎子と手を繋いで下校しているのを見た衝撃はいまも忘れられない。
それでも周りの友達に励まされて、なんとか失恋を乗り越えた。
もう年度末の頃だったから、先輩は卒業し、その後燎子とどうなったかは知らない。
それから10年。もうすっかり忘れていた半年前、燎子が中途採用で入社してきたときはものすごくびっくりした。
向こうもまさか私がいるとは思わなかったようだ。それでもお互い社会人。当たり障りない挨拶をし、配属された課も別だったため、特に接点もなく過ごしてきた。
いったいどうやって私と伊吹が付き合っていることを知ったのか。
何がどうなって、ふたりが付き合うことになったのか。
考えれば考えるほど悲しくて、目の前が霞んでくる。
高校の時だって、この前だって、私は真剣だった。
伊吹とは、結婚も視野にあった。付き合って1年半。30歳になるまでには結婚したい、そう伊吹に言われたこともあった。
あれは全部嘘だったのかな。私といた1年半は伊吹にとっては軽いものだったんだろうか。
楽しかった思い出が溢れ出して止まらなくなる。
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