7320人が本棚に入れています
本棚に追加
「美濃さんが自分から仕事を辞めてもらえれば一番いいですよね」
「まあ……それができれば」
「じゃあ簡単ですよ」
「え? 簡単って復讐が?」
「はい」
復讐が簡単とはどういうこと?
「な、なに、どうやって?」
「藤原さんが幸せでいる、以上です」
「は?」
私が幸せでいるのが復讐? それはどういうこと?
「いやいやいや、復讐っていうのは証拠を見つけて、突きつけて、ギャフンと後悔させるっていうのが……」
「それやって、幸せですか?」
「し、幸せかどうかは別として、スッキリはするでしょ!?」
「復讐の本当のゴールはなんですか? スッキリしてそのあとどうなりたいですか?」
どんどん質問をぶつけられて、思わず下を向いて黙り込む。
「……風見さんと復縁することですか?」
永井くんの声が消え入るように小さくなる。すっと顔を上げ、彼の顔を見るときゅるんと潤んだ瞳がこちらを見つめていた。
もう一度、ローテーブルに目を落とす。
復讐の本当のゴールが何かはわからない。ただそこに伊吹との復縁はないと思う。
私のことを大切にしてくれたし、一緒にいた時間はかけがえのないものだった。いまも、伊吹への気持ちが少しだけれど残っている。
だとしても、燎子を選んだのは事実だ。申し訳ないけど、自分のことをフって乗り換えるような男性と、信頼関係を作ることは今後できないだろう。
私のことを大切にしてくれて、一途に思ってくれる人。そんな人をパートナーに選びたい。
最初のコメントを投稿しよう!