1.夜のサブスク契約

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「もう、何言って……」 「相性悪かったら別にヤらなくても、復讐には協力します。もし相性いいと思ったらサブスク契約してください」    ドキドキと痛いくらい心臓が鳴る。どこからこの自信がくるのだろう。私は手のひらをすっと彼の前に出して、距離を取った。  何? と首を傾げる永井くんの顔は、とてもかわいらしく見える。狂った提案とのギャップが激しい。 「わかった。た、試してみようか」 「そうこなくっちゃ」  永井くんは飲み干したコーヒーカップを片付けながらこちらに目をやる。その瞳はまるで小悪魔だ。 「私からも、ひとつ……」 「はい」 「契約はあの子が退職するまでよ」 「おー、こっわ。そこまでします?」  くすくすと永井くんは小さく笑う。 「でも、いじめるなんてゲスなことはしないんでしょう?」 「当たり前よ。そんなことしたくない」 「どうやって復讐するんですか」 「……わかんない」  げらげらと大きな永井くんの笑い声がリフレッシュルームに響く。  もう社内には誰もいなくて、2人だけ。24時間管理のビルは、AIにより遠隔管理されているから警備員もいない。 「藤原さんらしいですね」 「ば、ばかにしないでよっ!」 「仕事は完璧なのに、どっか抜けてるんだから」  くすくす笑いながら、永井くんが顔を近づけてくる。私は思わずパッと顔を背けた。 「試してみるんでしょ?」 「……ここじゃ、やだ」  昼間にリフレッシュルーム(ここ)で見たキスシーンがフラッシュバックして、心臓が握りつぶされたみたいに痛くなる。
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