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「もう、何言って……」
「相性悪かったら別にヤらなくても、復讐には協力します。もし相性いいと思ったらサブスク契約してください」
ドキドキと痛いくらい心臓が鳴る。どこからこの自信がくるのだろう。私は手のひらをすっと彼の前に出して、距離を取った。
何? と首を傾げる永井くんの顔は、とてもかわいらしく見える。狂った提案とのギャップが激しい。
「わかった。た、試してみようか」
「そうこなくっちゃ」
永井くんは飲み干したコーヒーカップを片付けながらこちらに目をやる。その瞳はまるで小悪魔だ。
「私からも、ひとつ……」
「はい」
「契約はあの子が退職するまでよ」
「おー、こっわ。そこまでします?」
くすくすと永井くんは小さく笑う。
「でも、いじめるなんてゲスなことはしないんでしょう?」
「当たり前よ。そんなことしたくない」
「どうやって復讐するんですか」
「……わかんない」
げらげらと大きな永井くんの笑い声がリフレッシュルームに響く。
もう社内には誰もいなくて、2人だけ。24時間管理のビルは、AIにより遠隔管理されているから警備員もいない。
「藤原さんらしいですね」
「ば、ばかにしないでよっ!」
「仕事は完璧なのに、どっか抜けてるんだから」
くすくす笑いながら、永井くんが顔を近づけてくる。私は思わずパッと顔を背けた。
「試してみるんでしょ?」
「……ここじゃ、やだ」
昼間にリフレッシュルームで見たキスシーンがフラッシュバックして、心臓が握りつぶされたみたいに痛くなる。
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