【偽りの愛の言葉】

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【偽りの愛の言葉】

 結婚してから一月が経ったけど、わたしたちの生活は何も変わらない。それに、自分からアクションを起こすつもりなんてない。 「あ〜もう……」  考えたら考えただけ分からなくなる。そうやってわたしの頭を悩ませるのは、彼のことを全然知らないからだ。  愛し合って結婚した人たちは訳がちがう。わたしたちの間に今は゛愛゛なんてものは存在しないのだ。     お風呂に一時間くらい入ってから、パジャマに着替えて寝室に行くと。棗さんはわたしのことを待っていたかのように、こっちに来いと手招きした。 「聖良、こっちに来い」 「……はい」  言われた通り、棗さんの隣に腰掛けた。そして棗さんは、わたしを後ろからギュッと抱きしめた。ズシッとベッドに重みが加わる。 「……棗、さん?」 「聖良。お前は何を考えているんだ?」  そして一言、抱きしめたままそう言った。 「……何をって?」 「俺には分からない。お前が何を考えているのか」
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