【夫婦としての在り方 Side棗】

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 だけど結局、聖良が俺の妻になっても、コンシェルジュに戻ることはなかった。あの仕事が大好きだったはずなのに……。  きっと聖良は、鷺ノ宮グループを恨んでいるんだろう。ホテルを買収されて大好きだった仕事を失って。そして何よりも、俺の妻になるという最大の決断を下したんだ。  鷺ノ宮グループの御曹司である俺の妻になるなんて、最も憎いことだとも思う。  だけどそれを受け入れたのはきっと、行き場がなかったから。  聖良のことを少し調べたけど。聖良は茨城の田舎の出身だった。  家は決して裕福ではなかった。そして父親との仲もあまりよくなかった。     田舎に帰ることを拒絶していることを知った俺は、聖良が少しでも幸せになれるように、救いの手を差しのべてあげたいという気持ちも、もしかしたらあったのかもしれない。  今思うと、同情の気持ちがあったのは確かだった。キレイで可愛いから、妻にしたいという気持ちもあったけれど。……それだけではなかった。
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