【夫婦としての在り方 Side棗】

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 正直、母さんを裏切った父親が許せなかったから、母さんの所に行こうと思ったけれど。  俺はこの鷺ノ宮グループの跡取りだということもあり、母さんの所に行くことができなかった。    もしそれが母さんの負担になるのなら、可哀相だとも思ったからだ。  父親は俺を認めてくれているのかどうかは、正直今でも分からない。  聖良と結婚したことで、俺は母さんみたいに聖良を悲しい思いをさせたくないと思っている。  聖良が悲しむようなことをすれば、俺はきっと聖良のそばには居られなくなる。そんな気がしていた。    結婚したばかりの頃は、聖良は全然笑顔がなかった。あんなに笑いながらお客様対応をしていたのを見ていただけに。あんなにも笑わなくなったことが、正直言うと俺は悲しかった。  ……分かっていた。俺が聖良に対して悲しい思いをさせていること。  聖良の顔から笑顔が消えたのは、全部俺のせいだってこと。    だからこそ、聖良を笑顔にしたいと思った。また笑ってほしい、そう思った。
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