【偽りの愛の言葉】

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「……わたしにも、あなたのことが分かりません。それはわたしたち、同じですよね?」 「俺はお前のことを理解したいと思っている。それは本当だ」 「……なぜですか?」  わたしたちは偽りの夫婦。そこに愛なんてないのに。それなのになぜ、知る必要があるのだろうか……。 「お前が俺の妻だからだ」 「……教えてください。なぜわたしを、棗さんの妻に選んだんですか?」 「それを知って、どうするんだ?」  絶対に教えてくれない。わたしを妻にした理由。どんな理由であれ、わたしには知る権利があるのに。……それなのに、全然教えてくれない。     棗さん、あなたはずるい。どうしてそうやってはぐらかそうとするの。  わたしは、教えてほしいのに……。 「……妻なのに、教えてくれないんですか?」 「そのうち教えてやる。時期が来たらな」 「時期?」  時期が来たらって、何……?それはいつなの?
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