【わたしはあなたの妻です】

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「どんな女と結婚したのか知りたくて、気になって来てみたら……。まさかあなたみたいな凡人と結婚しただなんて、驚いたわ。……なぜわたしとではなく、あなただったのかしらね?不思議だわ」  遠山さんという女性はわたしを嘲笑うかのようにそう言うと、わたしに一歩近付いて。そして耳元でこう言った。 「棗さんのこと、返してくれない」 「……え?」    返して……?それは、どういう意味……?  意味が分からないわたしに、遠山さんはまた一言付け足すように言った。   「絶対に許さない……。この泥棒猫!」  そしてわたしの頬を叩こうと手を上げたその時だった。わたしは反射的に目を瞑った。  た、叩かれる……! そう思った時だった。 「……おい。俺の妻に何をしているんだ?」 「な、棗……さん……」  棗さんが遠山さんの右手を抑えて、冷たい目で見下ろすと、一言そう言った。 「な、棗……」 「俺の妻に手を出すとは、どういう神経をしているんだ?」 「そ、それは……」
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