【わたしはあなたの妻です】

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「……俺の妻に何を言ったかは知らないが。妻を傷つけるヤツは誰だろうと、俺が許さない」  棗さんはそう言うと、わたしの肩を抱き寄せた。その言葉にわたしは、とても嬉しくなって……。 「……な、何よ。なんでこんな女が妻な訳?わたしが妻になれると思ったのに……!」 「自惚れるな。俺はお前と結婚するつもりなんて最初からなかった」 「……っ!」 「棗さん……」 「……いいか。今度俺の妻に何かすれば、ただじゃすまない。覚悟しておけ」 「っ……分かったわよ!」  棗さんはわたしの手を握ると、そのまま手を引いて歩き出した。  そして少し離れたベンチにわたしを座らせると、棗さんはわたしを思いっきり抱きしめた。 「棗……さん?」 「一人にしてすまない、聖良。……まさかこんなことになるとは思ってなかった」 「……い、いえ。気にしないでください。わたしは大丈夫ですから」  今初めて知った。……棗さんのそんな焦ったような顔。
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