【わたしはあなたの妻です】

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 知らなかったな……。棗さんも、そういう顔するんだな……。 「……あんなこと言われて、辛かっただろ?」 「………」  わたしは答えられなかった。  確かにあんなことを言われて、辛くないハズがない……。   心のどこかではショックだったし、すごく苦しかった。心の中を針でチクリと刺されたみたいに、苦しかった。  わたしが凡人だって分かっている。棗さんとも不釣り合いだっていうのも分かっている。  分かっているのに……。  やっぱり心の中は正直で……。この時わたしは初めて、棗さんの妻であるということを拒絶したいとさえ思った。 「……聖良、聞いてくれ。俺にとってお前は、すごく大切な人なんだ。お前のことを本当に愛しているんだ。……お前が辛い時はそばにいて、お前をずっと守りたい」  棗さんのその言葉に、胸を打たれた。棗さんがそんなふうに思ってくれているのに、わたしは棗さんに何も返せないままでいるんだなって。 「……俺はあの時、お前と結婚したいと思ったから、プロポーズをしたんだ」
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