【わたしはあなたの妻です】

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「……棗、さん?」  棗さんはわたしの手を握ったまま、話を続けた。 「決して敦子と結婚したくないから、君と結婚した訳じゃない。……それだけは分かってほしい」  棗さんのその目、その真剣な表情がわたしを捉えて離さない。  そんなに見つめられたら、何も言えなくなる。言い返せないよ……。 「……確かに元婚約者だというのは本当だ。というか、親父が敦子と勝手に結婚させようとしてたんだけど。……いや、こんなことを言うと、言い訳のように聞こえてしまうな」  少し慌ただしく話そうとする棗さん。 棗さんがこんなに慌てている姿を見るのも初めてだった。  とても新鮮で、だけど少しだけ嬉しくて。……ホッとしたりもした。 「敦子とは本当に何もない。いや、なかった。元婚約者だと言っているが、敦子には結婚はしないとはっきりと断った。向こうだって了承してくれたんだ」 「……あの、棗さん」  だけどわたしには一つだけ、どうしても気になってしまうことがあった。
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