【偽りの愛の言葉】

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「……ん、棗さん……?」  もう寝ようと言ったのに、棗さんはパジャマのボタンを外してきた。そしてわたしの下着の中に手を入れてきた。 「ん……なつ、めさ……」  ダメだって言いたいのに、棗さんの唇がわたしの唇を奪ってきて、何も言えなくなる。  ……棗さんはいつもそうだ。結婚してからも求める時は強引でわがままだ。 「んっ……あっ」 「聖良……」  だけどわたしのことを抱く時は、ちゃんと指を絡めて握りしめてくれて。その性格とは裏腹に優しく抱いてくれるんだ。  ……どうしてそうやって抱く時だけ優しくしてくれるのか、わたしにはいつも分からない。    棗さんのことをわたしはまだ分かっていない。だってそのことがどうも分からないから。  そしてその後も棗さんは、わたしのことを優しく抱いてくれた。……そこには愛なんてひとつもないキス。そして愛のない行為。    だけど夫婦としてあまり前のことをしているのに。なぜだか心は冷たいままだ……。
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