【偽りの愛の言葉】

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 感謝しないとな……。ありがとう、棗さん。韓国なんて初めてで、正直不安だった。  だけど棗さんが日本人のコンシェルジュを付けてくれていたらしく、日本語で話せるからそこはよかった。 「戻ったぞ、聖良」 「おかえりなさい。棗さん」    棗さんが戻ってきたのは、その後ニ時間後のことだった。きっと打ち合わせが長引いたんだと思う。 「……えっ?」   「聖良、待たせて悪かった」  突然棗さんが、後ろから包み込むように抱きしめてきた。 「……いえ」 「妻を待たせるなんて、俺は旦那失格だな?」  そう言って笑った棗さんは、わたしから離れると、バルコニーに出て伸びをしていた。  その時、部屋の内線が鳴った。コンシェルジュからだった。 「棗さん、ルームサービスをお持ちしても良いかと聞かれたのですが……。どうしますか?」 「ああ。じゃあ持ってきてもらおう」   「はい」  コンシェルジュに持ってきてくれるように頼んで、わたしは電話を切った。
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