【偽りの愛の言葉】

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「けっこう美味そうだな?」 「はい。そうですね」 「よし、冷める前に食べよう。聖良」    「はい」  わたしたちは向き合って、ルームサービスでの食事を取ることにした。  韓国料理が苦手なわたしは、棗さんの計らいで日本料理を頼んでくれていたようだった。  何もそこまでしなくてもいいのって思う反面、気を遣ってくれてるのだと知って嬉しかった。 「いただきます」  運ばれてきた料理はどれも美味しくて。わたしの作る料理よりも美味しく感じた。  あまり本当はそんなこと思わない方がいいのだと思うけど……。 「美味しいですね。棗さん」 「そうだな。……でも聖良の作る料理のほうが、俺は好きだけどね」 「……え?」  どうして棗さんがそんなことを言うのか分からなかった。わたしの料理を美味しいと言ってくれたことは何度もあるけど……。  まさかそんなことを言ってもらえるなんて……。思ってもみなかった。
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