【偽りの愛の言葉】

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「聖良の作る料理のほうが、俺は好みだよ」   「……そんな。ムリに言わなくてもいいですよ。そんなこと」 「ムリにじゃない。本心だ」    「……え?」  本心?今そう言われたような気がした。わたしの聞き間違い?それとも……。 「……俺は本当に、そう思ってる。お前のことも、大事にしたいと思っているよ」 「棗……さん」   「嫌われている。そう思われるのも仕方ない。俺たちは恋愛して、結婚した訳じゃないからな。……だけどお前は、俺の妻だ。妻を大事にしたいと思うのは、当たり前のことだろう?」 「……棗さん」  棗さんのその言葉は、わたしに重くのしかかった。そしてわたしの瞳とその鼓動を揺らす。 「聖良。俺はお前を、ずっと大事にしたいと思っているよ。……厳しくなることもあるかもしれない。それでも俺は、お前のそばにいたいと思う」 「……はい。ありがとうございます」  それがもし棗さんの本心なのなら、とても嬉しい。だけど……。
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