【偽り夫婦の誕生】

2/9
前へ
/125ページ
次へ
 遡ること三ヶ月前のこと。  偽り結婚をすることになった夫、棗(なつめ)との出会いは突然だった。    私はもともととあるホテルで、コンシェルジュとして働いていた。働き始めてから一年弱。  コンシェルジュとしての仕事の働き方が大好きで。この仕事なら、ずっと働いていられるかもしれないと、そう思っていた矢先……。 「ねぇ!聖良(きよら!)」    同期である村岡(むらおか)静音(しずね)が突然大声を出してわたしの所に駆け寄ってきた。   「静音?どうしたの?」 「ねぇ、聞いて!大変だよ!!」   「何が大変なの?」   「う、うちのホテルが……。うちのホテルが、あの鷺ノ宮(さぎのみや)グループに買収されるんだって……!!」  ……え?ええ? う、ウソ……!? 「ええ!?それ本当に!?」 「間違いない!さっき鷺ノ宮(さぎのみや)グループの社長が来て、そう話してたの聞いたの!」 「えっ、じゃあわたしたち……。どうなるの?」 「それが……」
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加