【偽りで手に入れた幸せ】

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 日本に着いたのは午後15時半すぎだった。本社へ着くと、社長は来客中のようで、ロビーで待つことになった。 「……聖良」 「はい。何でしょうか」 「聖良は何も話さなくてもいいからな?」 「……でも」   「大丈夫。話さなくてもいい。俺が話すから大丈夫だ」 「……分かりました」  鷺ノ宮社長に、棗さんとの結婚を報告しに行った時。鷺ノ宮社長は、棗さんとの結婚を許してくれたけど。実際はどうだったのか、全然分からない。  社長に気に入られたいとも、思ってはいないけど。……だけど鷺ノ宮家の御曹司の妻として、わたしは鷺ノ宮家に関わりを持ってしまったから、そう言った家庭の事情からも逃げる訳にはいかない。  社長はきっと、わたしなんか認めてくれないだろう。手厳しい人だと言うのは、棗さんからも聞いている。  社長さんと会うことを出来るなら避けたいけど。どう考えてもそれはムリな話であって。わたしが鷺ノ宮の嫁にふさわしいのかどうか、きっと試されているに違いない。
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