【偽りで手に入れた幸せ】

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「棗様、聖良様、お待たせ致しました。社長室へどうぞ」 「は、はい」  社長室へ案内されると、妙に緊張してしまって。なんだかドキドキした。 「棗、聖良さん、待たせてすまないね」 「いえ。お気になさらないでください」 「ありがとう。 さ、座りたまえ」 「はい」 「……失礼します」  社長の前にふたり並んで腰掛けた。そして社長がすぐに口を開いた。 「棗、聖良さん。改めて、結婚おめでとう」 「……ありがとうございます」 「棗はちゃんと、聖良さんの夫としてやっていけているかい?」 「はい。……いつも助けてもらっています。棗さんには凄く、感謝しています」  わたしはそう社長に告げた。棗さんは驚いたような顔をしていたけど。 「そうか。……棗はいい嫁さんをもらったようだな?」 「い、いえ。そんな……」 「ええ。本当にいい妻をもらったと思っています」   棗さんは社長に向かって、力強くそう言っていた。
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