【偽りで手に入れた幸せ】

5/13
前へ
/125ページ
次へ
「……棗、さん?」  意外だった。まさか棗さんがそんなことを言うなんて。信じられなかった。ウソみたいだと、何回思っただろうか。 「そうか。よかったな。お前もようやく一人の男としての幸せを掴んだのだな」 「はい。……言っておきますが、俺は社長、あなたみたいにはなりませんから」  わたしには、社長に対してなぜそんなことを言うのか分からなかった。……あの言葉は、一体どういう意味なんだろう……。 「そうか。 まあ、期待してるぞ」 「……俺は結婚式で、社長。そして聖良の両親に誓いました。聖良のことだけを一生愛することを。なので俺は、あなたみたいにはなりません」 「……本当に、口だけは達者になったもんだな」 「俺はあなたと同じことを、妻にしたくない」 「……そうか。所で棗、新事業を始める予定なんだったな?」 「はい。化粧品ブランドの夕来社長と提携することに決めました」 「そうか。 まぁ頑張れよ」   「はい。言われなくても、頑張りますよ」
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加