【偽りで手に入れた幸せ】

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「頼もしいな?聖良は」 「そ、そんなこと、ありません」 「聖良のそういう所も、俺は魅力のひとつだと思ってるけどね」  「……え?」  驚いて顔をあげたわたしに、棗さんは「俺、着替えてくる」と言って寝室に行ってしまった。  え、何?今の発言……? 今の言葉の真意が全く読めない。なぜ棗さんは、あんなことを言ったのか。どうして……?  韓国に行った後から、棗さんの様子がおかしいことに気付いた。  だけどその原因がなんなのか分からなくて、心の中がモヤモヤしてしまう。  わたしに優しくしてくれたり、幸せにすると言ったり。  確か韓国に行って三日目の夜だったかな。寝ている時、寝言でわたしの名前を呼んでいたこともあった。  わたしの勘違いの可能性だってもちろんあるけど、だけど……。その日以来、ちょっとずつわたしたちの中で何かが変わってきている気がした。  その小さな変化は、後にわたしたちを幸せへと導いてくれることを、わたしたちはまだ知らない。
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