【偽りで手に入れた幸せ】

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「聖良、行ってくるよ」 「はい。行ってらっしゃい。棗さん」 「今日の夜は取引先との会食があるから夕飯は作らなくていい」 「……はい。分かりました」 「もし帰りが遅くなるようなら、また連絡する。先に寝ててくれても構わないから」 「はい。分かりました」 「じゃあ行ってくる」    「行ってらっしゃい」     棗さんはわたしに軽めのキスをすると、カバンを持って仕事へと向かった。  わたしは棗さんを見送ると、洗濯を始めた。洗濯かごに入っている洗濯物を見て、いつも思う。  彼が着ているシャツなどは高級品のものだ。下手に洗ってヨレたりしないか、いつも不安になってしまう。  わたしのとは別に洗うことにしているけど、洗った後でしっかりとアイロンを掛けてあげて型を整えてるけど。クリーニングの方がいいのかな?   なんて考えてるわたしって……。完全に主婦みたい。  て、あれ?わたしは主婦なんだよね……?
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