【偽りで手に入れた幸せ】

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「ただいま」   「おかえりなさい。棗さん」   「聖良?まだ起きていたのか?先に寝てていいと言ったのに」 「……いえ。お仕事で忙しい棗さんよりも先に寝るなんて、おこがましいですから」 「何を言っている。お前も毎日、家のことをやってくれているだろう?家でも忙しいのは、お前も一緒だ」  「……ありがとうございます」  棗さんはそうやって優しい言葉を時々くれるけど、その言葉だってわたしが妻だから言ってるに違いないと。心のどこかでは思っていた。  妻だから優しい言葉をかけてくれる。例え偽りの夫婦でも、妻だから。優しくしておこうとか思われてたりしてないだろうか……。  なんて色々と考えてしまう。わたしの悪い癖だ。すぐマイナスなことを考えてしまう。  出来ることなら、今すごく聞きたいことがある。棗さんに。    わたしと結婚して、幸せなのかどうか。ずっと聞きたいと思っていた。  だけど怖くてそんなこと聞く勇気がないのがわたしだ。
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