【偽り夫婦の距離】

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「でも、これを着るの……?」    こんなの着たことない……。でもわたしに、似合うのだろうか?今思うのはそれしかない。  恐る恐るそのワンピースに着替えると、見たこともないわたしになっていた。  メイクをしているから余計に、わたしがわたしじゃないみたいだった。  そして鏡の前で自分の姿を眺めていた時。ガチャッとドアが空いた。 「え?」  ウソ……。もしかして、棗さんが帰ってきたの?え、やだ。どうしよう。こんな姿見られるのが恥ずかしい。 「ただいま。……聖良、準備は……」 「お、おかえりなさい……棗さん」  棗さんはその姿を見て、呆然と立ち尽くしていた。そしてわたしに近づくと。  そのままわたしのことを抱きしめてきた。 「え?な、棗さん……?」 「……すごく可愛い。似合ってる」 「え?」  可愛い?似合ってる?わたしの聞き間違いでなければ、今そう言われたような気がした。  本当に、そう言われたの……?
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