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「わたしと、棗さんとふたりで?」
「そうだ。俺とお前だけの特別な空間だ。素敵だろ?」
「……はい。素敵です」
だからわたしに、こんな素敵なワンピースを着るように言ったんだ。確かにこのお店の雰囲気に合っている。
……棗さんは、女心というのが分かっているだな、きっと。
わたしと結婚する前はきっと、何人もの女性とお付き合いをしていたに違いない。
それにわたしなんかよりも、よっぽどお金持ちのご令嬢と結婚した方がよかったんじゃないかと、思う時もある。
……わたしみたいな人がこんな御曹司の妻になって、何かメリットはあったのだろうか。
なんの取り柄もないわたしなんかが、彼の妻になったことも。人生が変わった瞬間ではあった。
「コース料理で頼んである。……さ、座って?」
椅子を引いてくれて、エスコートしてくれる棗さん。……こういう所は、本当に紳士だなと思った。きっと昔から、こういうふうに女性には優しくしてきたんだろうな……。
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