【お互いの理解への関心】

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「さ、帰ろうか」 「はい」  食事の支払いを済ませた棗さんと、そのままお店を出た。棗さんの紳士さは、すごく特別だなと思った。わたしがお手洗いに行ってる間に支払いを済ませてくれていたようだった。    そんなことを知らずにいたわたしは、ちょっとだけ棗さんにドキッとした。  だけどそれは、棗さんには言わない。……なんか、言いたくない。  「棗さん、ごちそうさまでした。とても美味しかったです」 「それはよかった。また来よう」 「……はい」  棗さんは駐車場に着くまで、わたしの手をギュッと握りしめてくれていた。だけど棗さんの気持ちを知ってしまったわたしは、その手を離すことも出来ないのだ。  棗さんがわたしを好き……。そんなこと言われても、まだ信じられない。棗さんはわたしのどこが好きなんだろう……。  人を好きになったことはわたしもある。だけどその好きをまだ棗さんに感じてる感じはないと思う。  ……好きになれたら、楽なのに。
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