【鷺ノ宮夫婦の初めてのデート】

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「さ、行こうか聖良」   「あ、あの……。貸切にしたっていうのは……?」  もう今それが特に不思議で仕方ないのだ。どうして貸切に出来たのか。  しかも遊園地に行きたいと言ったのはついさっき、家を出る前だ。  なのになぜ、そんな早々と貸切に出来るのだろうか……? 不思議すぎて、仕方ない。 「ああ。さっきここに電話して、今日は妻とふたりだけで遊園地デートを楽しみたいから、特別に貸切にしてくれと頼んだんだ」  棗さんはあっさりした感じでそう告げた。 「な、何も、そこまでする必要は……」    なぜだかわたしのほうが焦ってしまうよ。わたしとのデートのために、そこまでしてしまうなんて予想をはるかに超えてくるし。  それにそこまでしてもらわなくても、全然よかったのに。 「今日は俺たちの記念すべき初めてのデートなんだ。ふたりだけで過ごしたかったんだよ」 「そ、そうなん、ですか……?」  だからってそこまでする必要は、なかったような気もするけど……。
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