【鷺ノ宮夫婦の恋心】

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 今日の夕飯は何を作ろうかな……。棗さんは何でも美味しいと言ってくれるけど。わたしみたいな一般人の妻が作る料理を美味しいと言ってくれる優しさも。きっと棗さんだからなんだと思う。  棗さんは優しいから……。気を遣ってくれているのだと思っていた。  だけどそれは本当のことだと、棗さんは教えてくれた。それだけでもう、心はいっぱいだった。  そしていつの間にか夜になり、夕飯を作る準備を始めた。今日は棗さんが食べたいと言っていたクリームシチューを作ることにした。  クリームシチューはわたしも大好きで。よく母親が作ってくれていていた。母の味だった。  クリームシチューを作っている間に、わたしが考えていたのは棗さんのことだった。……棗さんはあまり家では仕事のことを話さないけど。  棗さんは御曹司として、そしてそれを鷺ノ宮グループを担っていく一人として。しっかりと自分の役目をこなしていることをわたしは知っていた。
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