【偽り夫婦の誕生】

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 目の前にいるその人は、そう言ってわたしの腕を掴み、そのまま唇を塞いで強引にキスしてきた。 「ちょ、ちょっと……。何するの!?」 「これが俺の嫁になる君への、愛の誓いだ。まだ何か文句でも?」 「……っ」  こうしてわたしは、鷺ノ宮グループの御曹司、鷺ノ宮棗(さぎのみやなつめ)と愛のない、偽りの結婚することになった。 ✱ ✱ ✱ 「棗さん、おかえりなさい」   「ただいま、聖良」 「カバン、預かります」 「ありがとう」  棗さんからカバンを受け取ったわたしは、リビングにカバンを置いた。  そしてふと目にする、わたしたちの結婚式の写真。ドレスに身に纏ったわたしと、タキシード姿の棗さんが、笑っている。  だけどその笑顔だって偽物。だってわたしたちは、偽りの夫婦。嘘で固められた偽りの結婚生活。  こんな生活を、誰が望んだだろうか……。その写真に映っている笑顔も、全部ウソで固められている。
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