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えっと……なんでこんなことになってんだっけ。落ち着け俺っ!
黒木の部屋で、黒木のベッドに、黒木に組み敷かれて脳内がぐるぐるした。
「どうした急に。ずいぶん脳内テンパってるな?」
「だっ! だだだってっっ! なんか気づいたらもうベッドでっっ!」
「野間、頭パンクしてたからな」
黒木がクッと笑った。
「誘ったのは野間なのにな?」
「そっ?! そそうだけどっ! でも違うだろ?! 想像したのはお互いにだろ! 俺だけじゃねぇだろっ?!」
「ああ、そうだな。ちょっと野間、いったん口閉じようか」
そう言って、黒木が俺の口を唇でふさいだ。
「んぅっ?!」
びっくりしすぎて一瞬固まって、我に返って黒木の胸をグッと押したがビクともしない。
『ま、まままて黒木ーーっ!』
『口ふさいでも心がうるさいな?』
「んんっ、ふ……、ぁ……っ」
黒木まってほんと……っ!
俺は人の心が読める。聞こえてくる。
その人の思いが強ければ、時には映像で見えてくる。
いつからなのかはわからない。当たり前にずっと聞こえていたから、きっと生まれた時からなんだと思う。
この力が自分だけなんだと認識したのは、幼稚園の頃だった。
友達にはうそつきと言われ、親には気味悪がられた。
うそだよ、本当は聞こえてないよと言ったときの、母親の安堵した顔はいまでも忘れられない。
それからは力を隠すようになった。
自分が傷つかないように、自分を守るために、力を隠してずっと生きてきた。
それなりに楽しくやって来たけど、孤独感は常にあった。
ずっと一人ぼっちの気分だった。
高二の春、同じ力を持つ黒木に出会うまでは……――――
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