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その日の帰り道。川沿いの道を歩きながら、僕は夕焼けに染まった空を見上げた。
美しい。ただ美しい。こんなにも美しい。ああ、世界はすごい。素敵だ。
肇ちゃんは、もう塾にくることはないだろう。
猫も去ってしまった。
相変わらず、僕は何をしたいのか分からない。
だから、なんだ。
この毎日に何の意味があるのかなんて分からない。
猫が僕の脚で伸びをしたことも。
肇ちゃんが僕と一緒にいたことも。
理由なんて分からない。
だけど、きっと自分の未来は開けていく。
大丈夫。
根拠のない希望が僕の中に広がる。
力が沸々と湧き上がってくる。
ゆっくりと、太陽が沈んでいく。
夕日に染まっていた空が、次第に夜の色を帯びる。
僕は、夕日に背を向けると、目の前の道に一歩、踏み出した。
一歩、一歩、また、一歩。
眼前に、自分の影が長く伸びる。
その影を踏みながら、僕は顔を上げて歩いて行く。
おわり
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