夕日と猫と肇ちゃん

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そんなある日、肇ちゃんから一つの提案があった。 「隆司も、俺と同じ塾に来ない?」 何で肇ちゃんは、そんなに僕と一緒にいたいのだろう。全然分からなかった。確かに、その見た目から、彼に好んで近づく級友はいなかったが、かと言って、それを気にする肇ちゃんではなかった。 肇ちゃんと僕とでは、住む世界が違う。僕は何となく分かっていた。それは、家が裕福であるとか、貧しいとか、真面目であるとか、不良であるとか、そういうことではなくて、もっと生き様に関わる人としての根幹の部分が、全くもって違うのだ。 「親に聞いてみる」 僕は、一旦、即答は避けたものの、親も僕の成績を見るにつけ、塾の必要性を感じていたようで、肇ちゃんの話をすると喜んで賛成した。結局、断る理由が無くなった僕は、肇ちゃんに塾に通うことを告げた。 「そうか」 肇ちゃんは、いつもの不良のような鋭い眼光を和らげ、嬉しそうにほほ笑んだ。
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