夕日と猫と肇ちゃん

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その塾は、奈良駅の一つ手前の新大宮駅で降り、徒歩で二十分程歩いた市街地の中にあった。 自宅の一階の一室を教室にし、長机と椅子を並べて、そこで勉強を教えていた。いわゆる私塾というものだ。 先生は、ゆうに七十歳は超えているであろう、小柄なおばあさんの先生だった。髪の毛は全て白髪で、顔には年相応の皺が刻まれている。しかし、その瞳は活力に溢れ、頭の回転が、まだまだ衰えていないことを物語っていた。 塾には、地元の中学生や高校生も通っており、常に七、八人の生徒が黙々と問題に取り組んでいた。 僕は、週に三回、その塾に通った。しかし、僕の成績は、一向に上がらず現状維持がいい所だった。ただ、考えようによっては、塾に通っていたおかげで、何とか現状維持ができたのかもしれない。何分、僕には、向上心の欠片も無かったのだから。
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