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夕日と猫と肇ちゃん
川沿いの道を一人で歩いていた。
赤い夕日に染まった空が遠く、遠く、遥か彼方まで続いている。
夕闇に覆われる前の一時。
沈みゆく太陽。
燃えるような夕焼けとはよく言うけれど、まさしくそんな夕焼けだった。
余りの美しさに圧倒される。
鮮やかな赤やオレンジ、黄のグラデーション。
空が揺らいでいた。
僕は、ただ、ただ、その美しさに圧倒されながら歩みを進める。
そして思う。
世界は、こんなにも美しい。
なのに、僕は何をしているのだろう。
高校三年生の秋。
志望した大学は、実力テストの偏差値で選んだ。
特に、行きたいわけでもない。
しかし、僕は、その大学に合格するために、今日も塾への道を歩いている。
親が決めた高校、親が決めた大学。
その道を粛々と歩む。
この塾ですら、肇ちゃんに誘われなければ通っていなかっただろう。
周りの人に言われるまま、生きてきた。自分がやりたいこと何て何もなかった。
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