双子の兄弟はいつも一緒

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 陽翔は、不良グループにいる間だけは「出来の悪い兄」ではなく「陽翔」として見て貰えたため、気分を良くし心が休まるようになっていた。 親も教師も「あの落伍者達と付き合いをやめなさい」と言うが「月翔に迷惑をかけるようなことはやめなさい」と付け加えられることで「こいつらが心配してるのは月翔の方で、陽翔(おれ)のことなんかはどうでもいい」と言う本音を見抜き、不良グループとの付き合いをやめることはしなかった。 月翔も「あいつら、暴走族とか入ってて評判悪いよ? 付き合うのやめろとは言わないけど一緒に悪いことだけはしないでね?」と陽翔のことを心配するが、その声は届かない。  ある日、陽翔は学校近くの公園で不良グループと共に(たむろ)していた。すると、不良の一人が陽翔にブリーチの箱を差し出してきた。 「なあ? 髪染めね? お前さぁ、弟と似すぎてて顔見てるだけでダブってウザく感じてくるんだよね」 「はぁ!? 月翔(あいつ)、ウザがられてるの?」 「風紀委員だからな。髪を黒く染めて来いとか、ピアス外せとか、ウゼェのなんのって、ありゃ教師の密偵(イヌ)だな。このマジメぶりから教師も法学部に行くことを勧めてるらしいぜ? 今度なんか言ってきたら殴っていいか?」 不良グループに堕ちても、陽翔が月翔を大事に思う気持ちは変わらない。適当に誤魔化しつつ庇うことにした。 「あんなマジメくん殴って停学なんてバカバカしい。やめとけ」 陽翔はそう言いながらブリーチの箱を手に取った。 「で、中のクリームを髪に塗るだけ?」 「ああ、満遍なく髪に塗るんだ。髪の毛や頭皮が痛くなるけど『カガクハンノー』ってのが起こってるだけだから気にすんな。すぐに慣れるよ。染め終わったら公園(ここ)のトイレの水道でシャンプーすればスッキリするぞ?」 約二時間後、陽翔の髪染めは終わった。トイレの鏡に映っていたのは、髪が金髪に染まった自分の顔だった。これまでずっと月翔と同じだった自分の顔、生まれて初めて髪の色だけではあるが違いが出来たのである。同じ顔でなくなったことで、陽翔は何故かは分からないが開放感を覚えるのであった。
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