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月翔は兄を死刑に追いやった後悔の日々を送っていた。自分は間違ったことはしていないと心に何度も言い聞かせ、周りも「正しい判断をした」と慰めてくれるも、幼き日の陽翔と二人で一緒にいた頃の記憶が蘇り「非行に染まる前に止めていればこんなことには……」と後悔の念に苛まれてしまう。
そんな日々の中、月翔は献身的に慰めてくれた女性判事と恋に落ち、結婚することになった。
これからは愛する者を守らなければいけない。今日の結婚式はこの門出の日だ。月翔は白いタキシードを纏い、嫁の色に染まると言う気概に溢れていた。
厳粛に行われる結婚式は最高潮を迎えた。月翔が両親への感謝のスピーチを行っている最中、式場の扉が激しく開かれた。入ってきたのは襤褸布を纏ったチンピラである。チンピラは叫んだ。
「陽翔の兄貴の敵だ!」
ぱん
ぱん
二発の銃声が式場に響いた。銃弾は月翔の胸に命中し、白いタキシードを真っ赤に染めていく……
結婚式場が一気に阿鼻叫喚地獄へと変わった。月翔は痛みで意識が遠のく中、蚊の鳴くような声で呟いた。
「やっぱり…… 俺達二人で一人の双子の兄弟だったね…… 最後は同じように血に染まって死んじゃう…… なんてさ……」
おわり
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