双子の兄弟はいつも一緒

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双子の兄弟はいつも一緒

 その双子は鏡に映したように何もかもが同じであった。名前は「陽翔(ようと)」「月翔(つきと)」と対になるように名付けられ、健やかにすくすくと育っていった。  神は残酷なもので弟の月翔には皆が羨む程の才を与え給うた。IQテストではIQ150近くの数字を叩き出し、天才児の名を欲しいままにし注目の的となった。体力テストでも最高評価、周りの少年達を凌駕する身体能力を誇るのであった。  逆に兄の陽翔は至って平凡、IQテストでは100前後、どこにでもいる少年で誰も注目することはなかった。体力テストは平均値、周りの少年達とはほぼ同等の身体能力であった。  幼稚園の頃は月翔は周りから多少チヤホヤとされるだけで、陽翔ともあまり差をつけることもなく接されていた。だが、小学校に上がる頃には多少のチヤホヤは贔屓へと変わり、それが兄弟差別に変わるまでは短かった。 テストはいつも満点で、小学校低学年にして中学生の授業内容を理解する程の天才。それに加えてスポーツ万能。夜空に輝く十五夜の月のように月翔は人々の注目を浴びるようになっていた。  テストはいつも平均点以下、勉強が嫌いで授業中はいつも他事を行い成績も悪い。スポーツも体育の授業で可もなく不可もなしといったところ。常に空にある太陽のように陽翔は注目を浴びることなく平々凡々たるもの。  この二人は同じ顔と血を持つ双子。いつしか、二人は比較されるようになり、陽翔を「双子の出涸らしの方」などと小馬鹿にし、卑下する者が増えてきた。実の親でさえも「お兄ちゃんは月くんの邪魔をしてはいけませんよ」と陽翔を下に見るようになっていた。  陽翔と月翔であるが…… 兄弟仲は極めて良好。月翔は兄を侮辱する者がいれば誰であろうと「こういうのやめて下さい」と嗜めるのだ、例えそれが親であろうと。その後は兄へのフォローを忘れない、ただ慰めるだけでは「持てる者の驕り」にしかならないため「俺は俺、兄ちゃんは兄ちゃん。同じ顔だけど心の中は違うのは当たり前」と、双子の兄ではなく、個人である陽翔そのものを尊重する慰め方をすることで、陽翔は出来の良い月翔に劣等感を持つことなく仲良く出来ているのであった。 月翔は陽翔のことを双子の兄として心から愛し、陽翔も周りの無慈悲なる兄弟差別にも負けずに月翔を双子の弟として心から愛することが出来ていたのである。
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