【春×祐】春、到来。 全3話

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春、到来。(2) 「一つ聞かせろ。お前、歳は? 俺は二十七だ」  確信がある。こいつは二十七の俺よりは下だ。さっきから言動がガキとしか思えねぇし。 「ヒロちゃん、二十七なんだ! なんか雰囲気、落ち着いてるもんね! 口悪いけど! でもそこも好き。あ! 俺は十六!」 「そうか。十六か。三代。俺は礼儀のなってないガキは嫌いだ。俺の名前は高千代 祐だからちゃんと苗字に敬称つけて呼、」  べ、と言おうとしたとこで三代が半泣きになっていることに気づいた。おい、やめろ。 「ご、ごめん!! き、嫌わないで!! ちゃんと、ちゃんと高千代さんって呼ぶから!」 「……タメ口」 「ご、ごめんなさい!! お、俺、ただ、ひ、ぁ……高千代さんのこと本気で好きになっちゃって、少しでも、少しでも親しくなりたくて、だから……ごめんなさい…‥!!」  頭を下げられた。 「分かればいいんだよ。で、だ。初対面の相手に、それも同性に好きだとか付き合ってだとか、んなこといきなり言われて信じられると思うか?」 「え、と……俺だったら、その、俺とセックスしたいだけなんだろうな、って、感じると思い、ます。だから、信じられない、かも、です」 「っ!?」  いやいやいやいや。その歳で声かけられただけでそういう発想になるか普通!? いくらイケメンでもありえねぇだろ!? 「……ヒロ、お前、まさか、その歳でどうて、」 「っだぁぁああ!! るせぇ!!!」  いつも人のことをからかってくるような態度しかしてこない駿が、心底、それはもう心っ底、憐れみの目を俺に向けてきた。やめろ。本気で凹む。 「高千代さん、童貞なの……ですか? 顔いいのにすごく意外。……です」 「あー……なんか努力してんのは分かったから、タメ口は許可してやるよ」  単純そうなこいつならこれで話題が逸れる、はず。こんなとこでんな話しないでくれ。ほら、周りの奴らが俺のこと奇異の目で見てるだろ。 「高千代さん、なんで童貞なの? 高千代さんの顔ならモテるよね? セックスしたいって子もたくさんいると思うんだけど。左目の泣きぼくろとか色気すごいし。絶対、いるって、ほら、俺とか俺とか俺とかさ! すっげぇセックスしたいって思うもん。あっ! でも俺は高千代さんを抱きたいっていうかいつか抱くから高千代さんが童貞卒業できる日は一生こないじゃん! うん。えっと、ごめんね? でも童貞卒業できない代わりに男として貴重な処女なら喪失できるから! もちろん、その時はいっぱい時間かけて、優しく抱くから、安心してね? 安心して俺に処女、捧げてね?」  全っ然、逸れてねぇ!! 話題、逸れてねぇ!!!! 殴りたい。つかやめろ。マジでやめろ。ほら、なんか一部の女が目、輝かしてんじゃねぇか。隠れ腐女子かよ。今なら恥ずかしさで死ねるかもしれない。つかタメ口、許可してやったんだからスルーしろよ。なんでこういう話に限ってスルーしねぇんだよ。  その時、駿が俺の肩にぽんっと手を置いた。 「まぁ……頑張れ?」  爽やかな笑顔とか似合わねぇ面してんじゃねぇよ! いつもみたいにニヤけとけよ!! 腹立つ!!
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