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02 逃げていた日々のこと
それでも俺が大切に思っている人たちは俺のことを見捨てたりなんかしなかった。
たまに家に帰った時には母さんは俺を叱ってくれたし、父さんは穏やかに接してくれた。
中学三年生になって進路の話が出て俺は進学することに決めた。
学校にいい思い出がなかったからホントは進学したくなかった。
それでも進学することを選んだのには理由があったんだ。
俺の進路についての家族会議でみぃちゃんがノートを大量に投げつけてきてさ。
ページをめくったら俺にも分かりやすいように授業の要点がまとめられていた。
「勘違いすんなよ。直のためじゃないから。伯父さんたちに頼まれてやっただけだ」
そう言って不機嫌そうに顔を逸らしたみぃちゃんのほっぺたは赤かった。
そんな彼の様子や周りの雰囲気でみぃちゃんが自分からやってくれたことだと分かる。
その優しさが嬉しくて、心に染みて、でもちょっと気恥ずかしくてこっそり猛勉強した。
その結果。みぃちゃんみたいに進学校には行けなかったけど無事に進学することができた。
だけど中学で植え付けられた劣等感、学校に対する不信感は俺の中に存在し続けてた。
そんなだから教師に反発してた俺は髪もカラコンもそのままで高校に通ったんだ。
素行に関しては学校をサボること以外は中学の頃みたいに悪くはなかった。
だけど俺の中学での行いは高校にも伝わっていて変わらずの『クズ扱い』だった。
俺の通ってた高校には素行の悪い生徒が何人かいたんだけどさ。
他の奴らは上手くやり過ごしてて俺みたいに補導されることはなかった。
俺は教師に対して反抗的だったから色んな奴に目をつけられてた。
それでも前みたいに家に帰らないなんてことはなくなって、酒や煙草も中学を卒業してからやめた。
不特定多数の女の子と遊ぶこともしなくなった。
そんな中で目立つ外見だったから喧嘩を売られることがよくあった。
だけどそんな時には俺はいつも逃げてた。
人を傷つけるのも、傷つけられるのも、俺は嫌だったんだ。
俺にはそれらがすごく怖く感じて暴力を振るうのだけは無理だった。
でもさ。だからなんだってんだろう。
中学の時よりはマシになっただけで俺の世界は変わらなかった。
変えようと思ったことさえなかった。
自分を変えることを諦めてるだけだってのは自覚してた。
だけど俺はこんな日常の中で何も変えようとはしなかった。
――だけど、あの子と出会って、俺の世界は変わったんだ。
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