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07 ピックを貰った日のこと
バンドのメンバーとして歌うようになって自分でも変わったなって思う。
毎日がすごく楽しくて、ああ、輝いてるなって思える日々。
周囲からも「変わった」って言われるようになって、それが悪い意味じゃないことは皆の表情からも分かった。
三月が終わる頃、俺は自分で曲を作ることに憧れてイサカにギターを教わり始めた。
それを知ったみぃちゃんの従兄の『美咲 凌』――しーちゃんが俺にギターをくれた。
イサカが言うにはすごくいいメーカーのすごくいいギターで値段もそれだけ高い物らしくて『愛を込めて大事に使いなよ』って言われて俺は何度も頷いた。
こうしてボーカル兼サイドギター見習いの俺が誕生。
このことを友梨ちゃんに話したら彼女もギターについて少し勉強したみたいで『直にいちゃんにピックあげるね!』って拳を握ってたのが嬉しかった。
四月の初め。友梨ちゃんから約束してたピックをもらう。
白地に黒猫のシルエットが描かれた可愛いピックを。
ピックそのものが可愛いからってのもあったけどさ。
何よりも友梨ちゃんが選んでくれたものだから、俺は嬉しくて小さな子どもみたいにはしゃいでた。
そんな俺を見て友梨ちゃんは言った。
「ピックってたくさんあっても困らないんだよね? だったらもう一つ買ってくる!」
軽い気持ちで「ホントか!? よし、もう一個頼むな! これ気に入ったから同じのがいい!」って頼んだ俺を見たあの子は嬉しそうだった。
それから何を話したんだっけ。
そうだ。俺はちゃんと覚えてる。
もうすぐ入学式なんだよ、って笑ってたんだ。
それからだ。あの子が公園に来なくなったのは。
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