プロローグ

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プロローグ

「今日の結婚式良かったなぁ・・・はぁ」 そうつぶやきながら語尾に溜息がつくのは 私、伊賀奈 夢(いがな ゆめ) お独り様の三十三歳だからだ。 二月は乾いた風が吹いて寒い。 マフラーを引っ張り上げて 口元を埋めるように歩く。 どうせもう午後六時を回っていて辺りは暗い。 独り暮らしのアパートの通り道の公園は 人っ子一人いやしない。 三十三歳は微妙だ。 もう三十代と言われ、いやまだまだいけるよと 周囲の(主に男性の)目がそう物語っている。 今回の結婚式の新婦は会社の後輩で 式が終わった後に、出席者全員に一本ずつ花を贈っていた。 私に花を贈る時新婦である後輩は 「先輩、色々助けていただいてありがとうございました。 次は先輩の番ですよ。」 そう言って白いガーベラを私に手渡した。 私は内心ひくつくのを隠しながら 「おめでとう、お幸せにね」 と返して花を受け取った。 帰りの電車の中で花言葉を調べたら、 【希望】 とあった。 ・・・別に独り身でも希望はあると思うぞ、後輩。 そう思いながら歩いていると、 公園の階段の側に何やら落ちている。 「スコップ?」 そうスコップが落ちていた。
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