彼女の色

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 彼女は他人からどう見られようと、笑われようと、おかしな人だとはっきり言われようと、いっさい意に介さない。堂々と、毎日、全身ピンクでいる。 「だって私、生まれた時からピンクが大大大大大好きだから」  そう言って、泰然としている。何だ、文句あるのかと、ファイティングポーズを取っての主張ではなく、あくまで自然に、軽やかに、鶯がホーホケキョと啼くように。  彼女と出会ってから、僕の持ち物もだんだんとピンクが増えていった。僕がピンクの服を着ていると、彼女は手放しで褒めてくれる。すごく可愛い、最高に素敵、こんなにもピンクの似合う人なんて、はじめて。そんな風に乗せられたら、次もまたピンクを選んでしまう。これまでピンクの服なんて、一度も着たことがないくせに。今じゃピンクのものばかり、目が行くようになってしまった。さすがに彼女みたいに全身ピンク尽くしとはいかないけれど。
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