彼女の色

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 次の日、彼女は相変わらずの全身ピンクでそこにいた。僕はほっとした。彼女の主義も、僕に対する態度も、普段とちいとも変わらなかった。朝食はピンクのベーコンをのっけた蜂蜜トーストだった。  それからも彼女はピンク、ピンク、ピンクの生活を続けた。自分にも夢があるのだと打ち明けてくれたのは、ピンクムーンと呼ばれる春の満月の夜だった。赤ちゃんの服を作る人になりたいの。どの子もみんなピンク色の。  彼女は自分が長く生きられないことを知っていた。二十歳の時にはもう、その運命を受け入れていた。ピンクのベッドの中で、彼女は言った。私が死んだら、ピンクの棺桶に入れて、ピンクのお墓で眠らせてね。  難しいお願い。だからせめてピンクの花だらけで見送った。参列者は全員、ピンクの服を着て、ピンクのハンカチで泪を拭った。彼女らしいお別れだと、人々は僕を慰めてくれた。
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