彩眼鏡

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「へえ、色んな色があるのね」  テーブルの上には、色とりどりのメガネが並べられていた。 「どれにしマスカ?」 「あ、いえ。私は買い替えるつもりは…」  ない、と言いかけた私に、店員はにかっと笑った。 「一週間、お試し無料デスヨー」 「え?無料?」  無料という言葉に、私は弱い。  いいわよね、試してみるくらい。無料なんだし。それに、メガネを変えれば少しは気分も変わるかもしれない。  そう自分に言い聞かせ、ずらりと並ぶメガネを私は見回す。 「じゃあ、これを…」  思い切って、普段は選ばない赤フレームのメガネを手に取った。裏側に小さくメガネの形が彫られている。この店のロゴだろうか。試しにかけてみると、度もピッタリだ。 「赤、赤デスカー。熱いデスネー。じゃあそのメガネ、渡してくだサイ」  そう言って店員は、私が今かけているメガネを指差した。 「え?これ?」  どうやら自分のメガネと店のメガネを交換するシステムらしい。  そっか、借りたまま返しに来ない人もいるかもしれないものね。私は自分の銀縁メガネを外し、店員に手渡す。 「じゃあコレ」  店員が差し出してきたのは、小さな白いカードだ。店のロゴと、一週間後の日付が書いてある。 「これがあれば、返しに来る事を思い出せますカラネ」 「どうも」  カードを受け取り、財布の中に入れる。 「では、存分にお楽しみくだサイ」  それだけ言うと店員は店の奥へと消えていった。 「変な店ね」  赤いメガネをそっとかけると、私は店を後にした。
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