彩眼鏡

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「あ、そうそう。メガネ借りてたんだった」  唐突に思い出したのは、財布の中の1枚のカードを見た時だ。白いカードには今日の日付が記されている。 「って、あれ?ちょっと待って」  私は額を押さえる。この1週間、私はこれまでの自分とは別人のように、あらゆることに情熱を燃やし続けた。 「どうしたんだろう、私」  本当に私だったのだろうか。この7日間の私は。あれだけつまらないと思っていた日々がやけに煌めいて感じられた。 「炎が現れてからよね」 そして、炎が現れたのは、この赤いメガネをかけてからだ。 「もしかして…」  メガネ屋へと、私は走る。  出迎えてくれたのは1週間前と同じ店員だった。 「ええそうデス。彩眼鏡は、見える世界を彩るメガネ。炎が見えたデショウ?あれは、この赤いメガネの力デスネ」  私が借りたメガネを指差し、店員はニコニコと言った。 「見えるだけ、ですか?あの、かけた人の心を変えるとかは…」 「この眼鏡にそこまでの力はありマセン」 「そうですか…」  では、この1週間の私は、確かに私だったのだ。  赤いメガネを外し、私はまじまじと見つめる。  驚いたのは、メガネの力だけではない。見え方が変わるだけで、自分がここまで変われるということだ。  もしかしたら、このメガネを使えば人生を変えられるかもしれない。 「良かったら他の色も試してみマスカ?」  店員の言葉に、私は勢いよく頷いた。  
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