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ピンクのメガネは、トキメキを彩るらしい。
それに気が付いたのは一週間後のことだった。どうやら、あの店のメガネをかけると、メガネを借りたことを忘れてしまうらしい。前回同様、カードを見た瞬間に全てを思い出し、私はまたメガネ屋へと走った。
「次は何色にしようかな…」
一つのメガネに、私は手を伸ばす。
「見て、泣いてるわ。私はなんて可哀想なことをしてしまったのかしら。きっと一晩中私を待っていたに違いないのに。何度も私を呼んだことを覚えてる。だけど、忙しさを理由に私は振り返らなかった。あの時ちゃんと応えていたら。そうしたらきっと、こんなことにはならなかったのに…。ごめんなさい、どうか私を許して」
鼻を啜る私の背後で、家族が口々に言う。
「母ちゃん何言ってんの?電子レンジに煮魚入れっぱなしにしただけじゃん」
「一体どうしたんだ?お母さんは。お前たち知ってるか?」
「分かんない。けど母ちゃん、昨日も泣いてたよ。父ちゃんのセーター抱き締めながら」
「洗濯して縮めちゃったヤツな」
「その前の日も泣いてたよね。あなたたちを凍えさせるところだったって」
「お風呂の栓、忘れてたんだっけ…」
「どうしたんだろうね、母ちゃん」
「うん、おかしいよね」
そう。青は、悲しみの色。
一週間後、全てを思い出し、私は頭を抱えた。
間違いない。私の望む世界はこれじゃない。
どれ?どれが一番いいメガネ?私は目の前の金色メガネを掴んだ。
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