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ここのところ、毎日がつまらない。
ぐるぐると箸で卵をかき混ぜながら、私は思う。
昔はもっと人生がキラキラしていた。なのに、何故だろう。今じゃ毎日が曇り空だ。
掃除、洗濯、料理、3人の息子たちの世話。次々と降りかかるそれらを、まるでロボットのように淡々とこなす日々。ヤンチャだが可愛いはずの息子たちは、時々、怪獣のように思えるし、無口で小太りの夫とは、どうして結婚したのか最早思い出せない。
ドロリとした不安に、思わず手が止まる。
このままずっと、私はこんな日々を送っていくのだろうか。トキメキや情熱などのない、灰色の毎日を。
「母ちゃん、朝ごはんまだー?」
甲高い声に、はっと横を見る。
ムスッとした顔で、一番下の息子が私を見上げていた。
「はいはい、もうちょっとで出来るから」
隠しきれないため息と共に、私は卵をフライパンへと流し込む。
「あれ?」
その日の買い物帰りのことだ。見慣れぬ店に私は足を止めた。どうやらメガネ屋らしい。
「メガネか、最近変えてないな…」
店先に貼られたチラシに目を走らせる。
『彩眼鏡』
カラフルな文字でそう書かれていた。
「アヤメガネ?イロドリメガネ、かな?」
「イロメガネ、デスネ」
「わっ」
突然現れた店員に、私の心臓はドキンと跳ねた。
「お待ちしておりマシタ。どうぞお入りくだサイ。よくここを見つけられマシタネ」
「え、いえ、私は」
断る間もなく、店員に背中を押され、私は店へと足を踏み入れる。
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