プロローグ

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プロローグ

雨の音、風の音、階段を登る音。 ひとつの影がゆっくりと屋上へ歩を進めていた。その階段は古く、殆どが錆びに侵食され、ところどころが朽ちていた。一段登るごとに思い出を振り返りながら、それでも影は確実に登っていく。屋上へと続く扉は既に開いていた。刻々と風と雨の音は大きくなっていく。 冬にしてはやけに強く降る雨と風。 身長よりもやや高めなフェンスを登り、一足長程のコンクリートの足場に立ち、村時雨で騒がしくなった屋上からゆっくりと逆さに落ちていったその少女は静かに命を絶った。 それから今までの雨が無かったかのように間を入れずに太陽の光が屋上に差し込んだ。
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